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福岡高等裁判所宮崎支部 事件番号不詳 決定

主文

本件抗告はこれを棄却する。

理由

本件抗告の理由の要旨は左に摘録のとおりである。これに対し当裁判所は次のとおり判断する。

一、理由一の要旨は原決定は裁判官の良心に反する決定である。即ち刑事裁判は審判の公平を期するため同一事件を同一裁判官が異つた審級で関与し得ないこととし、裁判官は良心的に審判しなければならないことは明らかである。然るに本件再審請求事件につき決定した裁判官の構成は全て請求人に対する被告事件の第一審における裁判官の構成と同一である。これらの裁判官は先に自ら認定した事実に固執し請求人に不利益となることを知り乍ら敢てこれに関与し決定したものと考えられるので同裁判官は自らの良心に反して本件決定をしたものというべく(従つて原決定は事実を誤認したとの趣旨と解する)原決定は破棄さるべきであるというのである。

しかしながら刑事訴訟法第四三八条には再審請求事件の管轄は原判決をした裁判所と定めている。勿論こゝにいう原判決をした裁判所とは国法上の裁判所であつて訴訟法上の裁判所でないことは明らかであるが訴訟法上の同一裁判所が再審請求事件についての審判に関与しても違法ではない。所論は前審に関与した裁判官が再審請求事件に関与することの違法をいうけれども本件は単に再審開始の決定をするかどうかについてだけであつてそのためには確定判決の基礎となつた訴訟記録を検討することも必要とせられ且確定判決の本案事件とは全く異なる審判手続によることとなるので確定判決をした裁判所と前後審の関係に在るものではなく、また刑事訴訟法第二〇条七号所定の裁判官の除斥の原因にもあたらない。(大審院大正一四年三月一八日決定刑集四巻一七七頁参照)そこで原決定裁判官が先に自ら認定した事実に固執し本件につき請求人に不利益な決定をしたかどうかについて検討すると、原決定は右本案事件の記録を調査し、本件再審請求の当否を検討した結果請求人が刑事訴訟法第四三五条六号のあらたに発見した証拠として主張する証人山口ヤス、山口武人、東郷瞳、東郷昭、川端若子、末吉操につき、同犯罪の動機原因に関する被告人(本件申立人)の昭和三〇年一一月一五日附検察官に対する供述調書山口ヤスの同年同月二〇日附司法警察員に対する供述調書同人の同年一二月七日附検察官に対する供述調書及び第一審公判における証言の内容を調査し前記証人が前記確定判決の認定した事実を覆すに足る証拠とは認められないとし、なおこれらの事は請求人が事件当時から知悉していたことであり上告趣意書にも詳細に記載している事柄であるから、これをあらたに発見した証拠ということもできないとしているのでこの点につき当裁判所で更に本案記録に基いて検討したが原決定が右のように判断したことはその説明していることと同一の理由により当裁判所も相当と認めるしなお請求人は同事件第一審第二審を通じて同公訴事実はすべて相違ない旨認めておりこれらの点を綜合し原決定裁判官が確定判決で認めた事実に固執して良心に反して請求人に不利益な判断をしその結果事実を誤認したとは考えられないのでこの点に関する論旨は採用することはできない。

二、所論は原決定は「原判決が認定した事実を覆すに足るであろうと思われるような明らかな証拠と見る事は出来ず又再審請求者自身が事件当初より当然知悉していた事柄であり又すでに同人が自ら上告趣意書にも詳細記載しているのであるから到底あらたに発見した証拠ということはできない」としているが上告趣意書に記載された事柄は上告裁判の性質上何等具体的な審理の範囲となつておらず、又証人は調べてみなければどのような証言をするかは不明であるから請求人が事件当時知つていた事柄であるからという理由であらたに発見した証拠でないという訳には当らないというので検討すると申立人があらたの証拠として主張する前掲証人等はいずれも確定判決の第一審公判廷において証人として又は司法警察員、検察官に対し関係人として本件請求書記載の事項にも関連して供述しており該供述調書は同公判において適法に証拠調もなされており申立人は当時本件請求事項に関してこれを証拠として請求する機会の存したことは容易に窺知せられるところであり従つてこれらの点に関して原決定があらたな証拠を発見した場合にあたらないとしたことに何等の違法もない。

以上説明のとおり原決定は相当であり本件抗告は理由がないことゝなるので刑事訴訟法第四四七条第一項によりこれを棄却することゝし、主文のとおり決定する。(昭和三三年一二月二三日福岡高等裁判所宮崎支部)

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